なぜ土が大切なのか?

生きるために欠かせない、生命の土台。

人が摂取する食べ物の99.7%は、土から育ったもの(※国連食糧農業機構・FAOのデータより)であることを、ご存じですか。

私たちは、食べなければ生きていけません。すこやかに暮らすためには、食べることと同様に食べ物を育てることも必要です。さらに、食べ物を育む土がどのように管理されている のかは、味や栄養、日持ちなど「食の質」にも関係します。

「土から考える」農業に取り組むことで、農地と私たちの食卓がつながります。土は、私たちの 日々の生活に大きな影響を与えているのです。

土の機能向上がもたらす、大きな効果。

土の管理を適切におこない、土の状態を改良すると、私たちの暮らしの質も向上していきます。

  1. 土砂災害予防
  2. 水源、地下水涵養
  3. 水質浄化
  4. 治水
  5. 災害時の避難場
  6. 物質循環
  7. 有害物質除去・分解
  8. 養分の流出を防ぐ
  9. 二酸化炭素の固定
  10. 微気候の緩和
  11. 害虫の抑制
  12. 食料・一次産業の高付加価値
  13. 景観向上
  14. 環境教育の場
  15. 健康増進
  16. 土砂供給
  17. コミュニティ活動

豊かな食を育む、私たちの水。

実は身近な存在である土について考える時、何よりも大切なのは、作物の生育に適した状態を維持していくこと。砂漠化や極度の劣化、土壌の侵食などが進行すると、作物の育たない貧しい大地が生まれてしまうのです。

命を育む自然の水が循環する際、最も重要な役割を果たしているのが土。山に降りそそいだ雨は地中に染み込まず、表面を流れて土を削り、濁流となります。すると地下水や湧き水を生み出す機能が損なわれ、山や森から土 がなくなって…植物は根を張ることができな くなり、栄養分や水を吸収できなくなった山は岩だらけの姿になるなど、森や草原は今とはまったく異なる風景に変貌します。

植物が育たなくなると、空気中の酸素や二酸化炭素の量にも影響を及ぼします。このように、土は直接的にも間接的にも、私たちの暮らしに深く関わっているのです。

災害を防ぐ、生命多様性。

良質な土は雨水をたくわえ、不要なものは地下へ流します。舗装された場所では水が浸透しないため、排水溝から川などへ流れ込んで 水の循環を妨げ、川の増水を引き起こすなど大きな問題につながります。土壌が侵食されると、土砂崩れなどの災害リスクも高まります。けれど、土だけでなく植物や石などとの組み合わせによって、それらを防ぐことは可能です。

さまざまな命を支える、生物多様性。地球上のほぼすべての生き物は食物連鎖によって食料を得て、生きています。食物連鎖の始まりは、土。ティースプーン1杯あたり地球全体の人口より多く存在する、土の中の生き物からです。

今、私たちの暮らしは自然から隔離され、食物連鎖の一端を担っているとは言いがたいかもしれません。また、これまでは、微生物などの生き物は農業や人類の生活にマイナスに影響すると考えられてきました。けれど現在はマイナス面だけでなく、植物の生育にも人々の生活にも有益に作用する微生物類の働きが重要である、とあらためて認識されています。

自然との新たなつきあい方を創造する。

土の機能は、大きな問題がなければ、自然に還すことで少しずつ回復します。けれど都市部や人が使う農地、居住地ではそれが難しく、ほったらかしにされています。

土があると雑草との戦いになるのは、農地も住宅地も同じこと。

庭に植物があると、毎日の水やりなど手間や作業が増えてめんどうだと感じる方も多く、構造物によって土が次々に覆われていく様があちこちで見られます。残念なことに、土の存在はデメリットだと想われがちなのです。

また、土があっても植物が存在しなければ、土の機能の維持・向上はできません。土の機能が向上するように管理されている農地はまだまだ少なく、公共の場においても土の状態や植物の生育に配慮した手入れはおこなわれていないのが現状です。
私たちは、この現状をなんとかしたい。

「未来を土から考える」ことは、土の管理方法を変えることで私たちの未来をよりよく変えること。今までとは異なる大きな負担を背負うのではなく、今の暮らしに負荷をかけずにできることを社会全体で実践すれば、かかる費用や環境への負荷も減らせるはずです。

暮らしを過去の在り方にもどすのではなく、景観からインフラとしての機能まで、現代の暮らしに合う自然との付き合い方を創造し、未来に向けて自然環境との新たなつきあい方を提案していく…それが私たちの使命であり、そんな未来を一緒に実現していく人が増えればいいなと願っています。