奈良県吉野町 国栖の杜 土壌環境調査

奈良県吉野町で国栖の杜という地域に開かれた公共スペース(森)をつくる計画が進んでいる中で、植えた植物が育つような環境整備をするためにどうるべきかというアドバイスと施工方法の技術を提供をしてきました。

褐色森林土という土質ですが、下層が礫で形成されていて、固く締まりやすくやせた土壌。
そこでの植物の生育や、植物の育て方、土作りや土を改善する資材、資材の質や提供先などのアドバイスなど、現地で行い、報告書の作成まで。
これが実際に施工に生かされてうまく施工されて、質の高いいい空間ができることを願います。

以下は報告書より一部一般的に役立つ部分を引用。

地形や位置の確認。侵食を受けやすい礫により構成された土壌。周辺の急斜面が多いことからも土壌侵食により形成された土地で人が暮らせる平地が形成されやすかったと想定が想像される。そのため斜面があればその斜面の表土の保護や植生の維持は重要になる環境です。

農研機構 日本土壌インベントリーによる基礎情報
礫質褐色森林土の特徴にある表層30~60cm以内に礫盤層が現れると言う点は、国栖の杜の予定地には当てはまらない。旧国栖小学校が山を切り出して平地を作っているため、森林土の表土部分は削られてなくなっている。礫の層の上に薄く砕石を転圧。その上に真砂土や山砂などを10センチ程度敷き詰めるという標準的な校庭の仕上がりになっています。
そのため森のように植物を育てていくためには痩せ過ぎている土壌の状態になります。

現状の土壌の状態
現状の土壌の状態(校庭の標準的な仕様とされているもの)に近いのが現状です。
この下が礫質褐色森林土の礫が主体になっています。有機物はほとんどなくやせた土壌で、このままでは植物の生育には適さない環境。礫同士がかみ合って固まりやすい。この状態を改善し、元あった褐色森林土のように有機物が豊富な表土をつくり続けていくことが豊かな杜を作っていく上で欠かすことができません。既存の状態では通気が悪くなりやすく、保水力が少なく、養分は少なく(チッ素、リン、カリウムなどの多量要素から、カルシウム、マグネシウムなどの微量要素まで)養分を保持する力も弱く、pHは酸性に傾いている。生物の多様性もなく、植物にとって有用に働いてくれる微生物の数自体も少ない。植物を育てる際に長所となる点がありません。

土壌の機能として必要な3つの要素があげられます。
物理性(通気性・排水性など)
生物性(生き物の環境・植物の根など)
化学性(pH、ミネラル、CEC)
現状ですと3つの機能全てに問題がある状態で植物を育てることができる環境ではありません。

物理性
礫と真砂土の組み合わせなので、通気が難しいよく固まった土壌の状態です。排水はそこまで悪くないですが、平らなこのような面では植物の生育は制限されます。石碑がある隣にあるカシやタイサンボクは生長しているが、その隣は切り取られた斜面。このシチュエーションの場合、平面が締まりやすくても横からの通気も可能なため生育への問題が起こりにくくなります。
旧校庭の部分は横からの通気もほぼなく、平なので物理性の改善(掘削でほぐす)ことは必須です。

生物性。
礫と真砂土はどちらも有益に働く生物にとっての環境がありません。生物が増えることは森にとって重要なことですし、植物を育むためにも必要な条件です。そのためには生物にとっての食べ物が必要です。今回の場合、質の高い堆肥とウッドチップのマルチングがそれに当たります。

化学性
これは土壌化学分析をしなければ出ないのですが、礫や真砂土は養分が失われたやせた土なので補給が必要です。石灰や炭、堆肥、ウッドチップがそれに当たります。今回の土壌はpH6。pHは6以上、7以下あ
目指してください。

土壌改良を施す
問題のある現場ですが、土壌を改善することはできます。欠点として上げたポイントの改善をするために必要なことの鍵は、土壌の有機物量を高めること。
土壌有機物を増やすために、今回できることとしては3つあります。
1、質の高い堆肥を使う(生物による分解プロセスを経た堆肥)こだま再生バーク(
2、表土を保護するための有機物によるマルチング
3、炭や石灰(有機石灰、苦土石灰など)の使用

1、質の高い堆肥を使う。
バーク堆肥は造園工事で最もよく使われる堆肥ですが、質が低いものが多く、病気や虫の大量発生などの理由の一つとして質の低い堆肥が原因になっているケースが良くあります。
質の善し悪しを決める要因は堆肥の作られ方です。堆肥は材料の多様性(樹皮:バーク)だけでなく、幹や枝葉などが入っているものを使い、それらの素材を微生物により分解されたものが質の高い堆肥です。
堆肥の質については使う側で意識されることが少ないですが、樹勢の強いものであれば堆肥の質が悪くても生育しますが、樹勢の弱いものを直す際などは質の高い堆肥を使うことが重要です。
質の高い堆肥は空間をつくることで物理的に植物の生育空間を整え、生物の環境も整えます。今回の国栖の杜のように、下層土の礫で育てる場合には植物にとって有益に働く生物の生育環境が乏しく締まりやすい土壌の状態のため、根の生育にも悪影響が出るようになります。初期に堆肥を混ぜ込んでおくことで、物理的にも生物の環境的にも良い環境が整います。(奈良県の場合、こだま再生バーク:都市樹木再生センターは質の高い堆肥でした:2015年に確認して以降確認していないので質の再確認は必要)
2、表土を保護するための有機物によるマルチング
堆肥を混ぜ込んだだけでは土の有機物量を増やすのには限界があります。また土壌は表土が見えている状態が最も劣化が起こりやすく、土が削れる土壌侵食も発生します。自然の中では土は落ち葉や枝などで常に保護されています。今回の国栖の杜も表土は芝やウッドチップで表土が見えないように保護しておくことが重要です。
注意:マルチバークは同じように見えて効果が少ないため使わないようにしてください。マルチバークは樹木の樹皮(杉ヒノキがメイン)で微生物による分解が遅く、傾斜面で使うと飛んだり流れたりしやすい。
枝や葉などが混ざったウッドチップの場合、菌類により地表面に固定されるため、動かず、分解過程で様々な生物の活動が、マルチの下で起こるため、土の物理性の改善、生物環境の改善が常に行われる。

3、炭や石灰の使用
pHの低い土壌のため、炭や石灰(有機石灰・苦土石灰など)を使うことでpHの調整とミネラルの供給をしておくことが必要です。pH4.5以下に下がると土中のアルミニウムや鉄が過剰に溶け出す様になり、反対にカルシウムやマグネシウムなどが溶け出さなくなります。そのための生育障害が起こる可能性があるため炭や灰、石灰などを使用してください。炭と石灰の両者を組み合わせることも効果を高めます。
炭はpHの調整だけでなく、炭の中の微細な空隙が生物の住処になったり、空気を留める効果もあるため使えるのであれば植栽周辺、芝生の下地にもしっかり使ってください。
石灰は消石灰は使わず、苦土石灰を使うことをおすすめします。今回の礫にはマグネシウムも少ないので、カルシウムの補給が中心になる有機石灰よりもおすすめです。
使用量は100㎡=10kgが標準です。

土木工事について
礫が固まっていることが大きな問題です。固まったままの礫の層の中に植物の根は入れません。
ほぐされていない礫の層があると、植えられた植物の根は土の中深くに入らず、ほぐれている層に向かって広がるように伸びます。
対策として、土木工事や客土の際に大きな重機で土をほぐすこと、使えるのであれば、パーライトや炭、堆肥(少量)を使いながら現状のGLから60cm以上の土をほぐしてください。パーライトや炭などを混ぜながらできれば、礫が固まるのを和らげて土の中に空隙ができます。
  

重機による掘削・掘り方
重機を持ってくるタイミングや客土のタイミングの段取りによりますが、今回の国栖の杜の開発の場合、重機が来るタイミングは客土運搬のタイミングになりそうなので、以下の順序で掘削をしてください。通常の土木工事と違う点は、植栽する場合、フワフワ柔らかい土はNGですが、キャタピラで何度も締め固めたような固くしまった土もNGです。一度ほぐして軽くバケットで抑える程度抑えられて人が踏んだときに弾力があって少し土がへこむくらいが目安の硬さです。

整備順序(参考:現地で作業効率を考えて施工お願いします)
1 、GLから600以上掘って土をほぐしながら客土・盛り土をしていく。
一度ほぐした土を締めすぎないように、体育館側の奥の方から始めて駐車場側に戻ってくるように作業してください。客土や土壌改良材 2* を混ぜながらできれば後で混ぜる手間が省けます。

2、締まりやすい土の通気性改善のための資材投入。
炭やパーライトなどの通気改善資材を600まで掘り下げた層の土に混ぜ込んでいく。
堆肥はあまり深く入りすぎると酸素不足であまり有効に働かないのでできるだけ表層に多く使うようにする。堆肥については今のGL以下にも多少混ざるのは混ざったほうが良いが、多く混ぜるのは盛り土した部分だけにする。

3、全層に高品質の堆肥を投入。耕運機(トラクターのロータリー耕・もしくはバックホー)で混ぜ込み。約1,000m²辺り4トン 超。
客土された部分や表層を中心にトラクターやバックホーなどを使って堆肥を混ぜ込む。今回使用する堆肥は質の高いもの(こだま再生バーク:株式会社都市樹木再生センターのもの)炭やパーライトなどの通気改善資材を600まで掘り下げた層の土に混ぜ込んでいく。
堆肥はあまり深く入りすぎると酸素不足であまり有効に働かないのでできるだけ表層に多く使うようにする。堆肥については今のGL以下にも多少混ざるのは混ざったほうが良いが、多く混ぜるのは盛り土した部分だけにする。

4、敷地の造形を整えて植栽前の造成完了。

5、植栽時は植え穴にパーライト(炭)、堆肥をプラスで投入。高木(10mサイズ)1本辺りパーライト1袋(100リットル)堆肥2袋
全体の土壌改良が終わった状態から植栽する際にも樹木一本一本に対して改良剤を使っておく。高木(4m)に堆肥20㍑、炭2つかみ程度(使う資材や予算に合わせて決めてください。

落ち葉、剪定残さの扱い方

落ち葉や剪定残さの扱い方。今後、国栖の杜を育てていくにあたり、落ち葉や剪定残さの扱い方について。ウッドチップは少しずつ分解されて土に還っていくのでそれの継ぎ足しが必要です。落ち葉や剪定残さはできるだけその場に残すようにしてください。落ち葉は植栽周辺にはきもどし、剪定残さは切ったものを粉砕するかハサミで刻んでその場に戻すか。有機物が常に補給され続けるようにしてください。