それが住まいの庭でも、パブリックな公園や施設でも。無駄な飾りを取り去り、生きた土や植物の作用を素直に生かして自然を身近に感じられる空間をつくりたい。それがリビングソイル研究所の基本です。木陰の心地よさに誘われて、思わず部屋の外に出たくなったり、知らなかった樹木の名前や生態を覚えたくなったり。そんなふうに土や植物に親しむ人が、社会に増えてほしいから。リビングソイル研究所は「7つの約束」を掲げて、これからの暮らし・地域・環境問題を考えていきます。
「過ごす」が快適になる空間をつくります
春から秋前半にかけて、日差しが強く気温も高い日本。プライベートな庭でも、公園のようなパブリック空間でも、外で過ごす時間を楽しむためには、ほどよい木陰が欠かせません。たとえば庭であれば、樹高4~4.5mの高木に中低木を組み合わせて、春から秋にかけて心地よい木陰がウッドデッキに広がるようにし、庭で読書をしたりお茶を飲んだりといったアクティビティが快適に行えるよう設計します。木陰に加えて、ウッドチップや落ち葉など有機物で地表を覆うことで、雑草が生えにくくなるというメリットもあり、お手入れがラクになって一挙両得。かつてのような「眺める」庭園から、「つい外に誘われ、過ごしたくなる」空間へとシフトすることで、土や植物に親しむ人を増やしたいと考えています。
土が本来持つ力を生かした環境をつくります
土が本来持つ力を生かした環境をつくります庭木も街路樹も、肥料で育てるのではなく、土で育てるもの。そこで当所では土壌改良材として、落ち葉、刈草などを自社で発酵熟成させた堆肥のみを使い、長期的に土そのものの体力を高めてゆきます。さらにウッドチップで地表を保護することで、過度な温度上昇や乾燥から植物を守りながら、健やかな成長を促します。
できるだけ地域の風土に合った自生種を選びます
国土の7割を山林が占める日本では、地域ごとに多彩な植生があります。そこで当所では、景観の印象を左右する高木や中低木は、できるだけ地域の自生種を中心に選ぶようにしています(一方、低木や下草には園芸種から選ぶこともあります)。そうすることで、遠く離れた土地から園芸種を運ぶのに比べ、輸送コストや環境負荷を抑えることが可能に。さらに、数年サイクルで入れ替わる植物の流行に左右されない庭、10年20年と歳月が経つほどにしっくりと愛着が増す庭を作ることができると考えています。
経年変化を楽しめる素材を生かします
使用する造園資材は、経年変化が楽しめて周辺環境にもしっくりなじむ木材、鉄、石、コンクリートなどに絞っています。中でも、石、砂利、木材などの自然素材は、できる限り地域から調達します。構造物が主張しすぎるのを避けるため、カラー舗装やアルミ製品、樹脂製品などはあまり使いません。また、現代の建築に合うよう、昔の和風庭園の飛び石のような意匠よりも、直線的なラインを生かしてシンプルに仕上げています。
柔軟な可変性のある、シンプルなつくりにします
制作・施工費用がもっともかかるのは構造物(塀やアーチ、花壇など)ですが、当所はできるだけ構造物はミニマムにしています。それによって手入れ・維持管理の手間がかからず、DIYで手を加えたりするのも簡単。さらに将来、住み手が変わった時にも、うまくあるものを生かしながら費用を抑えてリフォームができるよう、扱いにくい巨石などの使用は避けています。
建築設計に調和する庭をつくります
当所が追求しているのは、人目を惹くインパクトのある植物を主体にしたり、職人のこだわりや技法を前面に打ち出す「作品としての庭づくり」ではありません。理想は、住み手の暮らしに寄り添い、歳月が経つほどに味わいを増していく庭。だからこそ、建物の設計や意図にしっくりと調和するよう、使う素材、植物の配置を考えながら空間づくりを行っています。
「閉じずに開く」ウチとソトのゆるやかなつながりを大切にします
住まいの庭も、公園も、まちの景観を形成するひとつのエレメント。四季折々に姿を変える樹木の姿は、道行く人の心にもうるおいを与え、自然の豊かさに目を留めるきっかけを与えてくれます。そこで当所は、守るべきプライバシーは守りつつも、同時にまちに対してゆるやかに開かれた空間づくりをめざします。そのような「閉じずに開く」空間づくりは、これからの防犯まちづくりにも役立つと考えています。