毎日土について考えて思うこと

2017年3月20日に姫路ロータリークラブで講話をした際に会報へ寄稿した文です。話した内容を短くまとめました。

普段から土について考える。
土について考えること。日常生活ではほとんどの方が意識したことはないと思います。私は日々、「こうすれば、もっと良くなるのに」と考えるのが癖になっています。
なぜ土について考えるのかというと、日本の自然環境の管理が「もったいない」と思うからです。農業、造園業、林業、その他にも土とかかわる職業は多くあるでしょう。それらの専門職の方々と仕事をしていて感じることは、彼ら専門家が管理していても気づかない間に土の状態が悪くなっていることです。しかしそれに気づいて対策することもありません。自然を管理するプロも土について考えることがないのが現代です。

それを身近で感じれるのが、身近な庭や公園です。多くの場合、雑草や落ち葉はその他のゴミと同じゴミ袋へ袋へ入れられます。しかしこれらの、「ゴミ」と扱われているものは、環境を改善するために活用できる「資源」と捉えることもできます。どうすれば良いか。落ち葉や雑草などはただ積み重ねておくだけで半年ほどたつと大半が、土にかえります。そんなに簡単に返せるものでありながら、捨てられているのが現状です。それらの資源が返ってこない場所の土は徐々に機能を低下させていきます。

落ち葉はゴミか?
私が最初に土に関心を持ったのは、オーストラリアに農業の視察に行ってからでした。例えばそこでは、落ち葉や雑草などの「ゴミ問題」においては分別が違っています。一般ごみ、リサイクルゴミ、緑の廃棄物の3種がありました。緑の廃棄物とは、家庭内から出てきた雑草、刈った芝、枝葉などはのことを指しています。それらを回収して、堆肥化することを取り組みを当然のように行っていました。また現地の多くの農家は、日本ではゴミとして見向きもしない、雑草や落ち葉などの有機物をお金を支払って購入し、堆肥化して広い農場の一部に使っていました。

そのような取組を知り、日本に戻り、「土」をもっと見直す農業や自然環境管理で何かできないかと思い、まずは姫路市内のゴミを土に戻すことを始めました。大きな規模でも重機があれば比較的簡単に取り組めます。土に関する事業のアイデアはその時にはありませんでした。しかし見渡せば問題が数多くあり、それを解決すれば、自然環境や公共の場、農業や庭など、自分たちの世代だけでなく、子供や孫の世代に対しても今より良い未来をつくれると考えて活動をはじめました。

土とくらし
土の問題を解決するときに、農業は大切ですが、ほとんどの一般の人にとっては縁のない世界のことです。問題が大きな分、より多くの人の意識を少しでも変えて、暮らしていくことが、大切だと思い、一般の人に身近な、住居の庭、マンションなどの植裁などの環境整備や場を作ることもはじめました。そんな場でも問題は多く、落ち葉。雑草。手間、お金がかかるなどの理由で、舗装や砕石で埋めるケースが多くなっています。すべての土をそのまま残すことは今のライフスタイルでは難しいかもしれませんが、少しでも土の空間を残して、植物を育て、自然と付き合う経験をしてもらうことが大切だと考えて土がある暮らしを提案しています。

土がある暮らしで大切なこと
土の機能が低下する最大の原因は、土がむき出しになることです。太陽の光、雨風とストレスがかかるその状態を作る管理がどこでも当たり前になっています。作物を育てるのに耕して雑草をなくすことは必要ですが、公園や庭で常に落ち葉を掃き、雑草を抜いていたら、土が常に劣化する環境になり、自然との勝てない戦いが続きます。
では土がどうすれば良くなるかを考えると、自然の中に答えがあります。山へ行ってみると、落ち葉、樹木の根、植物などで覆われています。これが人が手入れしている場と、自然が行っていることの違いであり、状態を改善していくのに重要なことです。自然に逆らうのではなく、自然がおこなっている管理方法をモデルに、土を落ち葉などで覆うようにすると、雑草は光が遮断されて生えませんし、乾くことも減るので、干ばつにも強くなります。また植物は病気や害虫の被害を受けにくくもなります。
この形で庭や公共の場の管理をすれば、日常の除草作業や除草剤が減らせ、散水もほとんど必要なくなります。必要な手入れといえば、きれいな状態を維持するための手入れ。枝を透かしたり、家で飾る花を摘んだりすること。身近な自然を楽しむことができるようになるための状態をつくっておく。そうすれば慣れない人でも抵抗なく自然とともに暮らす事ができます。

「みどりを育てるヒトを育てる。」
耕作放棄地や荒れる野山。社会問題と言われるそれらの解決策とまでは言えませんが、植物を育て、土や環境との付き合い方に慣れた人が増えれば、庭だけにはとどまらず、耕作放棄地で家庭菜園、荒れた里山の整備など、活動の幅を広げることができるかもしれません。今は職業としての専門家が行う自然の管理を、手慣れた一般の市民が少しずつ手を入れていく、小さな足元の土を見直すことでそんな未来につなげていけるのではないかと考えています。
土を変えることは1日2日でできることではありません。少しずつですが、コツコツと変化をつくっていきたいと思います。皆さんも足元の土に触れながらできることを考えていただければ幸いです。