姫路市公園改革 2021年度 姫路市公園部との協働 剪定研修講師

2021年度も2020年度から引き続き公園部の研修の講師とし関わっています。
緊急事態宣言下で全体の研修がなかなか日程が組めず、また姫路市の公園は市会議員の不当要求による問題により公園部はその対応に追われ、先への取り組みができていませんでした。
メールでの方向性のやり取りなどはしつつ、リアルなミーティングは7月末。現場で動いている職員の方々と、事務の職員の方々と一緒にマニュアルや現場での管理方針についての話。具体的に今年取り組むモデル公園についての話など。
2021年9月7日。モデル公園(市川西第一公園:姫路市)での事前打合せ。
10月14日に同公園にて年1回の剪定研修を依頼受けて弊所でやることになりました。そのため事前にどういう方向性で管理していくか検討し、打合せをしました。
事前の調査時。普通の剪定で管理コントロールするのはちょっと大変な公園だなと思い…大丈夫か少し不安。
外周に樹木、それもヤマモモ、クロガネモチ、マテバシイなどが外周に多い。低木はシャリンバイ、ヒラドツツジが大きく茂る。


このような公園が970位ある公園の半分位。この公園は難しそうと思っていましたが、他の場所でも応用が効くようにと考えるとここでやる意味があります。
ここを実例に、いかに現場職員のみなさんがきれいに早く、楽に管理ができるようになるか。また地元自治会の方に納得してもらい、思った以上にきれいに維持ができるような管理を考えました。
2021年9月7日の写真




ここでの課題
1,外周に低い位置で茂る低木のあり方
外周に茂る低木は見通しが効かず不快かつ、危険(車の見通しを邪魔する、ボールなどが入り込んでしまう。草刈りしにくい、蜂の巣が目視確認できない、実生の木が管理できない)
2,外周の常緑高木について
外周にはクロガネモチ、マテバシイ、ヤマモモと最大樹高20メートルサイズのものが列植で多く植えられている。(生育環境が悪く生育が悪いことは幸い)
3,地元の方々の公園への関わり方について
地元の方々は基本的には草刈りをしてくれている。(おそらく年2回ほど?)
子どもたちが遊んでいる形跡が少ない(草の伸び方を見て)荒れた公園になったイメージをどう変えるか。
4、地元とのコミュニケーションをどう取るか。
3年に一度の公園部による手入れだけではどうにもならないので、いかに地元の愛護会の方に関わってもらえることを増やすかを考えねばならない。
5,剪定講習会の進め方
昨年までの剪定講習の話を聞くと樹形を作る庭木の管理(造園組合による)の方法を指導されてきたそうですが、人によって違うのと、年1回以上管理する庭の考え方で3年に1回の公園を管理するのは無茶。
3年に1回である程度茂らせても良い公園のあり方をベースに剪定については考えなければならない。
解決策:今後の検討事項
1, 外周の低木について
入り口周りのシャリンバイなどの見通しを遮っている低木はすべて伐採して、根を抜いてしまう。それ以外も高木の足元にあるヒラドツツジなども同じく必要性がないので、抜根。できる限り開けて見通しの効く公園を作る。出入り時に車からも見えるようにする。外をあるいているひとや住民から公園の中がある程度見えるようにする(安全性の確保)
低木は必要性がある場所のみ残す。(実生木が間から生えてくるのを止めるために2回に1度程度はすべて切ってしまって実生木は枯らす)
2,外周の常緑高木について
角の見通しが効かないものは伐採(抜根も含む)
間隔の狭いものは抜根(樹木間隔が狭すぎる物が多い)
などあるものすべてを剪定するのではなく、そもそも必要な場所にきれいに整ったものを育てていく方針に転換。
残した樹木については低木を減らしていく方針と合わせて、それぞれ管理しやすい樹形を作りながら、樹木のボリュームを高めていく(公園の緑のあり方の基本方針を作る)ことで環境や災害対策などの公園が持つべき基本機能は確保して、かつきれいな公園を作る
3,地元の方々の公園への関わり方について
この公園については草刈りだけをしてくれているのが現状。(年2回程度)
草刈りのみで3年以上快適な環境を維持していくのは困難。後2つ位簡易で、長期的に必要な維持管理は何かを考えた
今日出た案(この公園でのこと)
1,草刈り(できればもう少し頻度高くが理想)
2,実生苗を抜く
アカメガシワ、エノキ、クロガネモチ、クスノキなどの実生苗が育ったままになっているのを初期の小さな頃に抜いてもらう。
それがされていれば、3年以上経って管理のときに大変な作業が一つ減り、荒れた見た目になるのも防ぐことができる。
理想を言えば、良い実生苗は育てたいところだけども、どれを残すかは難しい。
3,萌芽更新(伐採した樹木の株元から新しい新芽が出てくるように誘導すること)をした初年度、2年目と何本か下からでてきた枝を抜いていく
モチやマテバシイなどは株元から伐採して新しい新芽を吹かせて株立に仕立て直す。それが3年放置すると見通しのきかないボサボサの塊になってしまうので、それを初年度、2年目と抜いていく。 この作業自体は毎年やっていれば1本あたり2~3分で終わります。

このくらいの作業を付け加えてやってもらえればよりきれいな状態で、職員による手入れが可能になります。時間の余裕があればポジティブにきれいに整えるための作業や、新しい樹木の追加なども可能になるでしょう。毎回毎回同じ作業の繰り返しをやめることが大切です。
姫路市のこれからの公園管理における循環型の導入
協力が見込める公園には、コンポスターの設置を行い、公園内で出た草、落ち葉などの堆肥化を行っていく予定です。
写真は街路樹のアダプトで取り組む市民の方が設置したコンポスター。歩道に2つ設置で、周囲の落ち葉などを堆肥化。

公園内で出た落ち葉はこれまで近くの住民、愛護会、自治会の方々がゴミ袋に詰めて集めておいておく。それを公園部の職員が回収。という流れになっていましたが、それらの大半を堆肥化することで、集めて焼却するエネルギーや費用をなくし、植物が吸収した二酸化炭素を堆肥の形で固定。
住民による堆肥の活用などを考えると地域での環境の取り組みモデルになり得るはずです。
公園管理で出た枝などはできる限り炭化。炭は植栽時に使う。
太い幹などは、薪ストーブの薪に活用。
捨てずに使う。それを出来る限り標準化していこうと考えています。
以上のようなことを打合せで確認。
次回は、10月13日、公園部の研修会。翌日14日には剪定講習会。
2021年 10月13日。 姫路市のパークマネジメントの研修
大阪府立大学の武田先生の講演
ポストコロナ社会の公園を考える9つのキーワード
公園での取り組みをやっていくのに目の前の課題を解決するより、 遠くの目標に向かう考え方が必要。
遠くの目標設定が公園行政では難しい。 遠くの目標が一人当たり10平米という広さの面積の公園を整備するだった。
質より量という遠くの目標
これまでの設計や整備などを考えていくときに必要なのは、これまでやってきていた環境を読み解く(気候風土、土壌、植生など)だけを考えるのではなく、時代ごとのその場所の使われ方を考えてそれをベースに考えておくということも必要。時間のオーバーレイ
ビフォーコロナ
賑わいを中心に考えすぎていた。
アフターコロナ
持続性を考えたものにする必要があり
盛り上げすぎず徐々に良くしていくコツコツ良くしていく取り組みをする。
過剰な広告などインスタグラムなどでやるインフルエンサーや今日話しを聞いた絶景の人のような消費されるものを提供するのではなく、コツコツ作っていく→今やっている取り組みを継続してしっかり形を作っていこうということか。
都市とは、その通りを歩いている一人の少年が、彼がいつの日かなりたいと思うものを感じ取れる場所でなくてはならない。 ルイス・カーン
公園のハード整備だけではなく、ソフト面が必要 有馬富士公園のようなイメージ。
誰も使わない公園を作ルノではなく普段から使う場所を作る
10,000人イベントを年1回より
100人集まるイベントを年100回やるのも必要。
公園愛護会 →名称を変えるのは良いアイデアかもしれない。
公園愛護会に入りたいかと言われると自分も別に入りたくはない。パークフォースというような名前だったら関わりたい人多いかもしれない。
愛護会のPRがあまりにひどい 愛護会に関わりたいと思えるグッズを作るのはいい。
10月14日 姫路市 市川西第一公園 剪定研修会
参加者は 公園部の現業の職員の方全員(22名) 学校の樹木管理などをしてる職員の方5名
公園部の職員の方10名ほど。 一般参加 3名
前日から公園の大規模手入れをやっていたでした。
具体的には以前の打ち合わせ時に決めていた方向性の管理をしていこうと決めていたので、そのように手を入れているところでした。
樹木に関してはマテバシイは萌芽更新で株立に仕立て直す。
ヤマモモやモチはサイズが小さめなので、軽い剪定で育て直す。
低木については、不要なところは撤去。できる限り開く。
後日(10月18日)市役所での打合せで、この方向性でやっていくのはちゃんと継続してやっていって、将来手入れが減って負担が減っていくのであればやるのは良いが、やめたとなるのであれば負担が大きすぎてこのような手入れをできて年数件。
公園の見直し(不要なところは閉園などを含め)検討が必要。
低木についてはどうしても必要な所以外は必要性はないと思うので、低木は減らしていく方向が良いのではないかという意見を言っています。 3年~に一度の手入れではどうしても管理しきれず、茂みになるので、樹木の本数や緑の面積や量が足りないのは大きく樹冠を広げる高木でしっかり作っていく方が街の景観としても、使う場としての公園も生きる用に思います。
当日の手入れは下記の動画にあるようにヤマモモの基本的な剪定の実演。ヤマモモの生育改善方法について。
樹勢を見て、樹木の手入れを変えたり、大きく育てたい場所で育っていない樹木を育てる方法についてのレクチャーを一通りしています。
自治会の方向けに萌芽更新で株立仕立にする、マテバシイについて、なぜなのか、どのように協力してほしいか。どのようなメリットがあるのかを説明。
公園内に堆肥場を作り、落ち葉や草などを集めたものを堆肥化することについての説明、解説。
これらがうまくいけば、3年後には堆肥ができていて、3m程度の株立のマテバシイが数株あるスッキリした公園になっているバズです。
撤去した低木の跡地は地域の方が花壇として使いたいという意識を盛ってくれているようなので、花壇として管理されてきれいになるはずです。



前回打ち合わせ時の茂みだった所;住民の方が花壇として使う予定

ビフォー:上の写真は下の低木(シャリンバイ)が茂る場所

大きく切ると随分殺風景になるので、どこまでやるのかを考えないといけないですし、緑の量や質は高める方向でやらないと民間の営利企業がやっている活動ではなく、地域の環境のことも考えないといけない。どこまでうまくできるでしょうか。少しずつは前進してますし、よくなる方向には向かっている用に思いますが、なにせ大きい組織。方向が一気には変わらないと思うので少しずつ変わっていってくれると良い。






次回の現場研修は 資源循環について。堆肥化。炭化、チップ化など、公園で出る残さをどのようにうまく循環させながら、公園の緑の質を高め良い環境を作っていくのかにつながるポイントです。手間は増えるので、それがどこまで現実的なものか。 現場の様子をすべて知っているわけではないのですが、できるところから少しずつ広がっていくと良い。ゴミの処分費用削減効果はかなりあるはず
公園へのコンポスターが設置され始めました。協力や理解を得られた自治体や愛護会が管理されている公園に順次設置されていきます。費用は姫路市負担ながら、長期的に考えるとゴミ収集などの費用を抑えられつつ、落ち葉などの有機物が堆肥化されていく事になり、環境的にも良い事業です。
これからの時代を見据えて、公園の定番にしていけるかどうか。協力的な公園で見ていく予定です。


2022年1月13日 公園部 現場研修第二回
テーマ:資源循環型の公園管理に向けての取り組み
昨年度から少しずつ進めてきた公園での取組ですが、今回のテーマは資源循環型管理についてと実践の方法や技術についてというテーマでした。
環境やSDGsなど時代背景が後押ししてくれるので取組が容易になってきていると思うので、この時代に公園がやるべきなこととして説明をしました。

内容としては
1、落ち葉や公園内で出る草の堆肥化について
2,剪定・伐採した樹木の枝葉の粉砕チップ化について
3,同じく剪定・伐採、した樹木の炭化について
4,薪としての配布について
4の薪としての配布については、公園部で独自に取り組んできたもので、市民の方への無料配布や販売をしてきていたので、実際にどのような手間をかけてやっているのかなどを見せてもらいました。
1,落ち葉や公園内で出る草の堆肥化について
昨年から設置したコンポスターで公園内で処理するのが最も理想的ですが、持ち帰りが発生した場合堆肥化することがどういいのか。落ち葉だけでなく、草も入れて大丈夫なのかなど、意味や方法についても説明しました。
これまでの姫路市での取組としては、出た廃棄物(枝葉、幹などや草など)エコパークあぼしというごみ処理施設に持ち込んで処理してもらうというのが基本でした。
公園部の職員の皆さんの仕事を増やさずに堆肥化や2番めのチップ化ができれば、植物が生育した際に蓄えた炭素が土に固定されるようになります。堆肥化もチップ化も難しくはなく、簡易なのですが、仕組みを作るのが難しいと思います。
新しく仕事を増やしてしまうと今でも手が回らないほど忙しいので、負担を増やすことになります。
ただ、やり方次第では資源循環型でやるほうが費用も抑えられ、人件費もかからないようにすることもできます。
その取組については弊社で取組をした河川敷堆肥化についてケースを参照ください
2,剪定・伐採した樹木の枝葉の粉砕チップ化について
ゴミを減らしながら、環境に良い取組としては、これが最も現実的な対策だと思っています。
堆肥化は堆肥を作る時間と手間をかける必要がありますが、チップであれば粉砕すれば良いだけです。唯一の課題はは粉砕する機械の性能が高くないと時間も手間もかかってしまいます。
姫路市の公園部で所有している粉砕機を使った実演をやってもらいながら、チップにすることの意味やチップの使い方。効用について説明しました。


3,同じく剪定・伐採、した樹木の炭化について
弊社での取組を公園部の職員の皆さんに見に来てもらって、枝物は炭化、葉や草は堆肥化と全量資源循環型でやっているということを話をした際にモキ製作所の無煙炭下器を紹介して公園部で導入してもらいました。
こちらも実演しながら炭化することの意味や役割、炭について、炭素隔離効果があるか。土壌改良材としての炭の効用などを説明しました。
一番大きな無煙炭化器を使っていますが、出る有機物の量が多すぎるので、すべてを炭化するのは現実的には厳しいかもしれませんが、抜根した根の扱いに困っていたそうなので、根の炭化という役割は果たしてくれそうです。

全体研修を通して、講師として関わっているだけではオペレーションの全体像が見えず、どれが最も効率的か、どれであれば実現可能かなどがまだ見えない部分はありますが、上記で上げた越の取組を組み合わせれば資源循環型の公園管理は実現できるはずです。
それができたとして最も大切な点は、できた堆肥、ウッドチップ、炭などをどのように意味のある形で使うか、市民に伝えるかだと思います。
循環型管理が実現できれば日本での先進的な実例になるのは間違い無いと思いますが、その先に意味のある使い方をして、公園だけでなく、市内すべての資源を循環型で土地に返して行くことや市民の多くがその取組を家庭にも取り入れていくことができれば、街としておもしろい強みを持った街になるはずです。
今後はオペレーションや予算上どの程度の取り組みができるかなど実現に向けて公園部の職員の皆さんと一緒に検討していきたいです。